武田鉄矢インタビュー 「高倉健さんと俺の黄色いハンカチ」 週刊ポスト』誌上の映画史・時代劇研究家の春日太一氏による連載「役者は言葉でできている」では現在、武田鉄矢氏(65)のインタビューを掲載中だ。武田氏は1977年公開の映画『幸福の黄色いハンカチ』(山田洋次監督)で故・高倉健さんと共演した際のエピソードを数多く明かしている。ここでは、武田氏が語った連載本編に未掲載のエピソードを特別公開する。 * * * 『幸福の黄色いハンカチ』の撮影はストーリー展開の通りに順撮りで進められましたから、劇中で出会う場面で本当に健さんと初めてお会いしたんですよ。恐ろしくて、膝がしらが震えました。あの高倉健ですからね。当時は40代半ばの男盛りでカッコいいのなんの。 健さんに向かって僕が「オジサン、(カメラの)シャッター押して」と言うセリフがあるんですが、その時は山田洋次監督に「なんで映画スターに対するような声のかけかたするんだ! 相手は普通のオジサンだ!」と怒鳴られました。 そんな感じで最初は硬かったんです。でも、健さんが気を遣ってくれましてね。 忘れられないのは、ある日の撮影終わりのことです。山田組って、ロケ先では全員そろって晩ご飯をとるんです。俳優は健さん、僕、桃井かおりの三人が並んで座っている。で、その日、僕が食べようとしたら健さんが突っついてくる。フと見たら、箸袋を小さく丸めて渡してくるんです。「見つからないように広げろ」という仕草で。それを開くと「お腹いっぱいに食べるな。外に食べにいくぞ。桃井に渡せ」と書いてありました。 それで、三人で食べたフリだけして、部屋に戻って着替えて玄関に行くと、もう健さんが車のエンジンをいれていて、「乗れ」と。 健さんが闇の中を車で飛ばしていくと峠の丸太小屋があって、そこはステーキハウスでした。店も他のお客さんはすべて断わって、我々の三人だけ。「食いたいだけ食え」と健さんが言うものだから、肉食って、ワインをガバガバ飲んで。健さんから可愛がってもらっているのが嬉しくて、もう子供みたいなもんですよ。 そしたら健さん、「鉄矢はいいよな、監督に可愛がってもらって」と言うんです。「そんなことはないですよ。俺をいじめてるんです。俺を憎くて呼んだんだ」とか悪口を言っていたら、実は健さん、小さなテープレコーダーでそれを録音していましてね。翌朝会ったら、「これは昨日のテープだ」ってスイッチを入れるんです。その時はひたすら謝りましたそのあたりから三人の仲が良くなって、画面の中の雰囲気も馴染んでいきましたね。僕が監督に怒鳴られてフリーズしちゃうと、ちっちゃい声で「落ち着け、落ち着け」って言ってくれたりしました。 ラストシーンの撮影も思い出深いです。黄色いハンカチがたなびいていて、健さんが歩き出すのを僕らが見送る。台本には「若者の目に涙」とあって、こちらも「よし、泣いてやる」と思っていました。 ところが、いくら待っても空が晴れない。山田監督もカメラを回さないんです。健さんが歩き出して、僕らがフレームに入る。向こう側に真っ青な空。その構図に妥協しないんです。数日待っているうちに、僕は油断して近くの家のストーブで温まっていました。でも健さんは「気持ちが切れるから」と現場を離れない。 で、やっと五日目に雲が飛び始めたんですが、今度は僕の涙が一滴もでてこない。中止の連続で気持ちが上がらなくなったんです。 そしたら、健さんが察してくれまして。クルっと振り返って「長い間、世話になったな。今度は東京でのセット撮影があるから、戻っても気持ちを切るなよ」「お前たちとのロケはこれで終わりだけど、楽しかったな」って言うんです。もう泣ける、泣ける。 初めての映画撮影でしたが、健さんには本当に助けられました。
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